また今日もあの夢を見た。
あの、赤くて悲しい夢。

夜中に目をさましたエルクはシルバーノアから外へ出た。

なんでまたあの夢を見たんだろうか。
あの日からしばらく見ることのなかったあの夢。
そう俺の過去・・・村が焼かれていくあの夢だ。

なぜだ・・・?なぜあの夢がまた・・・。

と考えていたときだった。一人の男が俺の横に座り込む。

「トッシュか・・・。」

「どうしたぃ。こんな時間に。」

「おまえには関係ない。」

とエルクはフンとそっぽを向く。

「おいおい。心配して声をかけてやったってのにそれはねぇだろ?
 ぜってーなんか隠してやがるだろ。」

「隠してなんかねぇっての。」

「ふ〜ん。よくねぇ夢でも見たんだろう。」

「見てねぇよ」

「ウソついてんじゃねぇよ。
 そう言ってるわりにはエラクうなされてたみてーじゃねーか。」

「・・・・・・人の部屋に入ってきたのか。」

ギクっと反応するトッシュ。
しばらく沈黙が続いた。

「ついでに言えば人のモン毎日のように盗んでいやがっただろ。」

「・・・・・・・・。」

トッシュの顔が冷や汗でびっしょりぬれている。

「やっぱりな。変だと思ったんだよな。おまえ最近様子がおかしいしな。」

「変なのはおまえだ。最近戦闘中もボケーっとつったってるしよ。」

「?そうだったか?」

「そうだよ。どう見ても変だったぜ。リーザって子も心配してたぜ」

「・・・・・・。夢を見たんだ。」

とうつむきボソっとつぶやくエルク。

「夢?」

コクリとうなづくエルク。

「俺のガキの頃の夢。」

「ふーん。で?どんな夢だってんだ?」

「どんなって・・・。」

とだんだん沈んでいくエルクを見てトッシュは付け加える。

「いや、別に無理して言わなくてもいいんだぜ?
 つらいんなら別に・・」

「俺の村が焼かれ、父さんや母さん・・・みんなあいつらに・・・
 ガルアーノ達に殺された。」

「・・・。」

「で俺一人、白い家に連れていかれたんだ。」

「・・・・・・」

「前までは・・・再び白い家にいってアークに助けられるまでは毎日のように
 その夢を見てたんだ。」

「え〜っと・・・・?そんで今日久しぶりにその最悪な夢を見たってわけか」

「そう言うことだな。」

「で、夜中に目が覚めて外の風にあたりながらそれについて考えていたわけか。」

「あぁ。」

なるほどなぁとうなずくトッシュ。そして

「あんまり気にすんじゃねぇよ。」

と一言。気にするなって・・・。普通は気にすんだろ。

「俺は別に気にしてねぇよ。・・・・ただ」

「ただ?」

「また大切なモノを失ってしまいそうな気がして怖いんだ。
 今俺にはたくさんの仲間がいるが、また俺のせいでいなくなってしまったら・・・
 とか思うとな・・・・」

はぁとためいきをつくトッシュ。

「おまえ馬鹿だな。ホントに。」

「な、なんだと?」

「バーカ。いなくなるわけねーだろ。たとえしんじまったとしても
 別におまえのなかから消えるわけでもねーのによ。
 たしかにもうおまえの母ちゃんやおやじと話すことはできねーかもしれねぇがよ」

トッシュは自分の胸をどんどんとたたく。

「心んなかには死ぬまでずーっとのこってんだよ。
 いつだってまた会えるんだよ。」

「心の中・・・」

と自分の胸にそっと手をあてるエルク。

「だからさっさと元気だせ。おまえがそんなだったら
 みんな心配すんだろ。」

「・・・」

「そんじゃ俺は寝るぜ。」

「あぁ。」

トッシュはおやすみと言ってシルバーノアに戻っていった。
それを見送ったエルクはフンと笑い

「俺ももう寝るかな。
 ・・・みんなに心配かけるわけにもいかねぇからな」

と背伸びしたあとに夜空に向かって一言。

「おい。かぁさん、父さん、ミリル、ジーン・・・天国のみんな、
 心配すんな。俺は大丈夫だから。少しでも天国で幸せに暮らせよ。」

わかったよ。というようにながれ星が流れた。
エルクは一人部屋に戻っていった。